人口知能が何をするのかではなく、人口知能に何ができるかを考えよう
Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.
(国家があなた達に何をしてくれるのかではなく、国家のために何ができるかを考えよう)
John F. Kennedy
はじめに
ディープラーニングに端を発し、人工知能について、がぜん盛り上がり始めている。まだ巨大な資本のある会社は除き、会社としてはまだ動き出す段階ではないと思っているが、個人としても注目していて遊んだりしている。現時点の僕として認識を記録として残しておくのために考えていることを記しておくことにした。
Masumi Kawasaki Blog ディープラーニングを使って、娘の写真をゴッホ風にしてみました masumikawasaki.blogspot.jp
人工知能は本物か
ついに歴史的な日が…。囲碁のプロ棋士、グーグルの人工知能に破れる _歴史の1ページに、新たな項目が加わりました。 グーグルが AIの研究に注力していることは知られていますが、彼らが開発した 囲碁ソフト、その名も「 AlphaGo」がついに プロ棋士を打ち負かす という、衝撃のニュースが飛び込んできました…_www.gizmodo.jp
僕は少しだけ囲碁をやったりもするのだけども、この発達のスピードは予想以上だ。この人工知能の技術はディープラーニングという技術を使って作られているのだが、ディープラーニングという技術について、もう少し認識をはっきりさせておくことが必要だと思う。
なぜなら、人工知能というと、「人間と同じ知能=人間にとって変わるもの」という認識が生まれ、議論が別の方向の方に進んでしまうためだ。人工知能についての議論の多くは、論点が定まっていないなく、それは、神がいるのかという宗教論争と似ている。
また、例えば、レコメンドエンジンのように、我々はいつも新しい技術を人口知能と呼び、普及すると別の呼び名にするということを繰り返してきている。そのため、ディープラーニングという技術の基本的な部分を理解しておくことが大切である。
そこで、ディープラーニングが何かということだが、「人間の脳をモデルとして(略)」としたことが言われることが多い。これは実装部分の考え方では正しいのだが、利用者が受けれるメリットを表す言葉ではない。そこで誤解を恐れずに言えば、「**情報を認識し判断する技術である」**ということだと思う。
それによって、人間には処理できないような大量のデータを活用し(認識)、人間の能力をはるかに凌ぐ回答(判断)ができるようになった。これがディープラーニングの本質ではないだろうか。
余談1:人工知能の発達の速度
余談だが、この技術の発達の速度と技術的な優位性を一緒に語る人が多いことも気になっている。この発達の速度はインターネットが発達したことによるものが大きく、ディープラーニングの凄さとは関係がない。一つのアイディアが、情報が流通しやすくなった社会で多くの影響を与えているだけだ。この点については特異点(シンギュラリティ)とも関係するが、今回はやめておこう。
しかしながら、インターネットと言う高度に情報がオープンでやりとりされる仕組みの上に、ディープラーニングという「情報を認識し判断する技術」が使われるため、その効果は計り知れないのも事実だろう**。**
情報化社会からの知能化社会へ
ディープラーニングのもう一つの特徴として情報を判断するための思考プロセスまで機械に任せることができることがある。そのため、過去に学習した大量のデータを大まかな方向性でインポートし、その結果、答えを導き出すことができる。思考プロセスを定義する必要がない。それはまるで、人間が直感で判断をすることに近い。
(一方、これにより思考プロセスが隠され、これは危険なことでもあるのだが)
そして人ではなく技術であるがゆえに、複製可能であることと相まって、威力を発揮する。それによってどのようなことが起こるかといえば、自分専用のブレーンが複数いる、自分専用のコンサルタントが複数いる、自分専用のコンシェルジェが複数いるような状態になる。
つまり世の中がインターネットを使って情報を活用する時代から、認識技術を使って知能を活用する時代に入ってくるということだ。
余談2:人工知能に向き合うための参考書籍(マンガ)
攻殻機動隊が自我と情報をテーマに来るべき未来を予見したとの同じように、人工知能と人間の来るべき姿を考えるには預言者ピッピ(未完)を読んでみることをお勧めしたい。
攻殻機動隊(1) (ヤングマガジンコミックス) _西暦2029年。通信ネットワークに覆われ、膨大な情報が世界を駆け巡っている超高度情報化社会。しかし国家や民族、そして犯罪は依然として存在していた。より複雑化していく犯罪に対抗すべく結成された特殊部隊…公安9課に所属するその組織…_www.amazon.co.jp
預言者ピッピ1 (CUE COMICS) _「つまりぼくら、人類の未来をすべて計算しつくしちゃったんだ」究極の頭脳が紡ぎ出す預言は福音か、それとも…?鬼才が描く長編ストーリーが、満を持して登場!ピッピは地震を予知し、災害から人類を救う為に開発されたロボット。親友・タミオ…_www.amazon.co.jp
人口知能が我々を脅かすのか
NO。もちろん悪用する人や、兵器産業の転用といった懸念があるだろう。しかしながら、その人が悪いのであって、技術自体に善悪はない。
また、この技術は人類にとってメリットがあるものであるものであることは間違いない。これから活用方法を議論していかなくてはならない。金融、ジャーナリズムなど情報化されやすい産業から活用が進んでいくだろう。
人口知能が我々の仕事を奪うのか
YES。我々の仕事多くはパターン化でき、このような仕事は人口知能にとって代われる。このことはディープラーニング以前からすでに始まっており、例えば、検索エンジンは多くのコンサルタントの仕事を奪っただろう。一方で、人工知能を作る仕事はできる。技術の進化を止めることはできない。
「人口知能が発達した時に、人間にできる仕事はなんだろう」ということを聞かれたことがある。僕はその時、質問を言い換えた。「人口知能が発達して、仕事しなくて良くなった時、僕らは人工知能を使って何ができるだろうか」と。技術と対立するのではなく、技術を活用すべき方向を目指すべきだろう。
ちなみに、その答えは、「エンターテイメント」と「教育」だと思っている。